「コンビニたそがれ堂」(村山早紀)

そこで自分は何を探すのだろう

「コンビニたそがれ堂」
(村山早紀)ポプラ文庫ピュアフル

駅前商店街のはずれ、
赤い鳥居が並んでいるあたりに、
夕暮れどきになると
あらわれるという
不思議なコンビニ「たそがれ堂」。
大事な探しものがある人が
訪れると、必ずここで
見つけられるという。
今日その扉をくぐるのは
一体誰…?

カバー裏の紹介文につられて
買ってしまいました。
よかったです。
涙腺のツボを刺激されるように、
涙がこぼれてしまいました。
再読なのに。

1話完結のオムニバス形式の連作5話。
シチュエーションは
ありがちなのですが、
この「たそがれ堂」が
いい味を出しています。

第1話「コンビニたそがれ堂」
雄太はさよならも言わずに
アメリカに引っ越していった
女の子のことで後悔している。
なぜなら、彼女が別れの印に
差し出したメモ帳を、
まわりを気にして「いらねえよ」と
払い飛ばしてしまったから。
そのメモ帳を
今なら素直に受け取れるのに…。

第2話「手をつないで」
ママは私の大切にしていた
リカちゃん人形を捨ててしまった。
普段は優しいママなのに。
そんなえりかが
「たそがれ堂」で見つけたのは…。

第3話「桜の声」
アナウンサー桜子は迷っていた。
このまま仕事を続けるべきか、
田舎へ帰って結婚するべきか。
そんな中、公園の桜の樹の下で、
桜子は不思議な少女と出会う…。

第4話「あんず」
雌猫あんずは、
自分の死期が近いことを悟っている。
たった一つ願うことは、
人間になって飼い主のお兄ちゃんと
接すること。
あんずは「たそがれ堂」の店内に
迷い込む…。

第5話「あるテレビの物語」
「たそがれ堂」を訪れた
女の子が願ったのは、
この間まで家にあった
テレビさんに会うこと。
そして、テレビの魂もまた
「たそがれ堂」に辿り着く…。

心の底からもう一度出会いたいと
願ったものに再会できる
コンビニ「たそがれ堂」。
こんなにも心を揺さぶられるのは、
誰しもなくしてしまったものほど
いとおしいからなのです。
男の子、女の子、
大人の女性だけでなく、
猫、テレビの魂まで訪れる
コンビニ「たそがれ堂」。
こんなコンビニがあったら、
そこで自分は何を探すのだろう、
などと考えてしまいました。
なくしたものが多すぎて困ります。

すでにシリーズ化している
ファンタジー小説。
中学生にお薦めします。

(2019.9.17)

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